感想『プロミシング・ヤング・ウーマン』

 また映画観てきた。

 直訳したら『有望な若い女性』。今回も内容にふれる。たぶんネタバレされるとかなり嫌な映画だと思う。でも内容にふれながら思ったことを書くことが私にとって良いからやる。

 幼馴染の親友の復讐のために主人公が全力を尽くす話。主人公と幼馴染は同じ医学部にいて、数年前に幼馴染が、医学部でのパーティーで薬を飲まされてレイプされて、噂にされて自殺した事実を中心に話が進む。主人公は幼馴染の看病のために医学部を中途退学をしたらしい。

 幼馴染は映像として一度も出てこないので、観客は出てくるキャラクターの語りによって幼馴染を想像するしかない。主人公は、ひょんなことから加害者だった人たちにアクセスする機会を得て、彼らを次々と見つけ出して当時のことを語らせる。

 ある女は「記憶を無くすぐらい酔っていたのが悪い」と言い、元友達は「死んだ彼女のためにならないから執着するな」と言う。ある男は「お前は潔白なのか」と逆ギレし、ある男は加害者側の弁護士として死ぬほど後悔している。様々ではあるけど、概ね主人公に敵対的だった。

 主人公は、かなり強気で攻撃力がある。まず予告編にも出てくるけど、酔っ払ったフリをした自分を男に “お持ち帰り” させて、説教して帰宅する。怖くないのか。しかも彼女はそれを達成するたびに正の字で記録していて、それが何ページにも及んでいた。

 他にも、下ネタを吹っかけてきた男を無言で見つめ続けたり、男の乗っている車のガラスを鉄アレイで破壊したり。スゲー。

 私も私のことを気が強い方だと思ってたけど、私は言い返したり毎日コツコツ記録したりするだけだ。主人公に比べたら全然ものたらない。私にはナメんなという気概が足りない。

 私のことはさておき、主人公の強さは一方で、不安の裏返しという感じもある。最近私が自分に対してそう思ってるからだろうけど、昔の傷に新しい傷をつけて “回復” しようとしているように見える。そんなことでは回復しない。でも彼女はそうせざるを得なかった。

 そういう主人公は、加害者の人たちの語りを聞くなかで、報復のためにぶん殴りも殺しもしない。策略でものすごく不安にはさせるけど。復讐の鬼という感じではなかった。後悔している男には「私があなたを許す」と言ったりもする。しかしある出来事をきっかけに、彼女は徹底的な復讐をめざし、死ぬ気で復讐し、死ぬけど、復讐もした。

  *

 この映画を観終わった後、怪物大暴れ映画を観たときみたいに、心臓がドクドクし、胃腸がソワソワし、指と足に力が入らなかった。

 まず男の腕力やべーっていう恐怖心だった。それに男が泣きながら暴力をふるうシーンや、暴力の始末をしてくれる男の友達と抱き合うシーンは、不快すぎてゾッとした。

 あと嫌な記憶も蘇った。私は父親から数度酔っ払った勢いで抱きつかれたことがあって、彼らが離婚するときに父親は離婚の理由を「セックスできなくなったからだ」と言ってきて、高校生の私は「そういうことだったのか」と “納得した” 。

 それで、復讐のことを考えた。よく「最大の復讐は、その人のことを忘れて幸せになることだ」と聞く。私は復讐したいと思うほど自分のことが大切ではなかったし、嫌なものについては考えないに限るわいと思って、その言葉を軽く受け止めてやってきた。

 この映画の主人公は、幼馴染のことが大切だったから、自分の命を懸けたんだろう。そこまでできる動力源がある彼女のすごさに胸打たれた。もちろん命を懸けるほど大切なものがある必要はない。そもそも何にしても命を懸けるべきではない。それでも、私にないものを彼女は持っていると思った。

 友達が同じ状況になったとして、私は何もしないではいられないけど、これは友達想いゆえというよりは自分の気質の問題で、だとすれば何もしないでいるべきなのだと思う。私は主人公と同じことはどうやってもできない。

 そういう自分に空虚さを感じるな。終わり。

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